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No.006

サンタクララのこと

96/09/10
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堅い話ばかり続いている。
この辺で一服入れたいと思っていたところ、gさんがお誂え向き話をしてくれた。
仕事の話は抜きにして、海外駐在でのこんな話を集めたら、さぞかし面白い本になるだろう。どなたかゴキブリに、経験談をお聞かせ願えないだろうか。
とにかく今日は、ゆったりと頬杖でもついて拝聴することとしよう。

* * *
サンタクララのこと。
サンタクララ(santaclara)といってもサンノゼ(sanjose)、サニーベル(sunnyvale)、場合によっては有名なスタンフォード大学のあるマウンテンビュー(mountin view)を含む、あの辺一帯でのお話です。
サンタクララ郡というべきかも知れませんね。


サンタクララの町。
ご存じの人が多いので、知ったかぶりはできませんが、目抜き通りを一歩入った町並みは庭に花の植え込みのある普通の家庭と、ひっそりとした洒落たオフイスが立ち並び、落ち着いた感じで、此処があのシリコンバレーとは信じがたい田舎町です。
何とかアメリカビシネスを立ち上げようという、会社の方針に従って、勝手知ったアメリカ人と一緒に家具屋を呼び、オフイスの形を整えようと動いたのはバワーズアベニューでした。大分前の話しになります。

bowers avenue3300。この名前を記憶しておられる人は多いでしょう。
そう、あの有名なibmの囮捜査事件の本拠地となったオフイスがあった、通りの名前なのです。
教えられてよく見ると、普通の家庭と思った建物は軒並みベンチャーキャピタルの本拠地なのです。日本のように立て看板のないひっそりした誠に綺麗なオフイスは、どれもが一流企業か売り出し中のベンチャー企業でした。
激しいビシネスというものは、派手にどたばたやるものではない、と変な感心をしたのを覚えています。

ビシネスの最高の激戦地でこんな話をすると不謹慎に思われるかも知れませんがでも、今日はサンタクラ暮らしののんびりしたお話をさせて下さい。


飛行機の中の酔っぱらい。
あれは確か、ニューヨークからの帰りの便だったと思います。
そろそろサンノゼ空港に近づいた頃、キャビンの一郭が急に騒がしくなりました。何事かと立ち上がって見ると、酔っぱらいが女性客にからんでいます。からむと言っても、何かくどくどと挨拶をしているだけなのですが。
日本ではお馴染みのこんな風景も、酒に飲まれることの少ない欧米人の中では誠に珍しい事件ですし、ましてや紳士が酔っぱらって女性にからむなどもってのほかのことです。

そうこうするうちに、飛行機はサンノゼ空港に着き、乗客は酔っぱらいを無視してさっさと降りて行きました。
ご存じのように、空港から離れた場所に駐車場があるところでは、そこまで無料サービスのシャトルバスが運転されています。その飛行機で降りた殆どの乗客はそのシャトルバスに乗り込みました。ところでどうでしょう。その酔っぱらいも同じバスに乗り込んで来て相変わらず騒いでいるのです。

乗客は皆、知らん顔をして無視しようとしていました。
空港と駐車場はそんなに距離はありません。直ぐに大きな駐車場に入ります。
サンノゼ空港の駐車場は、ところどころに小さなバス停があり、駅名としてサンノゼ、サンタクララ、とかそれぞれ名前が付いており、自分の車を停めたバス停で降り車をpick upするのですが、どういう訳かその時は誰も下車しないのです。
ふと後方を振り返ると何とバスの後ろにピタリとパトカーが付いているではありませんか。
「酔っぱらいが乗車すると同時に運転手が警察に車内から電話したのだよ」と隣の人が教えて呉れたのでやっと、異様な雰囲気が理解出来たと言うことでちょっとピントはずれでしたね。
乗客はみんな酔っぱらいが何処で降りるかと、自分の降りるところを乗り過ごしてわくわくと期待を持って見ていたわけです。

酔っぱらいがある駅で降りました。でもバスは動きません。パトカーもライトを消してじっとしています。
暫くして、酔っぱらいの車にライトがつき動き出します。その瞬間、パトカーはライトをあかあかと点灯し、サイレンを鳴らし、すぐそばの酔っぱらいの車につけました。酔っぱらいは車から降ろされ、手錠を掛けられます。

その途端にバスの車内は拍手と歓声と笑い声で騒然となりました。
この時、アメリカ人のお祭り好き、ジョーク好き、演出好きには何ともはやとあきれた思いだったお話です。


酒と車とお巡りさん。
カリフォルニァ州も未だ酒飲み運転に厳しくない時代の話です。
ある男が友人の自宅で酒を飲み車で帰る時のことでした。
(二人で一升瓶二本弱と言っていましたから相当の量を飲んだらしい)
道路は片側四車線、夜も更けていたので車一台通っていません。いい気持ちで車線のはじからはじまでをジグザグ運転をしたそうです。
パトカーは大体、木陰に潜んで待ち受けます。いくら酔っぱらい運転に甘いといっても四車線いっぱいのジグザグ運転では警察も放っておけないでしょう。たちどころに停められ尋問です。

恐らく、経験者は無数に居られることと思いますが、先ず、親指と人差し指、親指と薬指と順に小指まで行き人差し指に戻って来るあの指の運動です。
次は鼻の前に指を立て、頭を動かさずに目だけ指に沿って動かす目の運動、その次は道路の白線上をまっすぐに歩く運動です。
酒には強い男だったのでどうやら全部パスし「よし、注意して帰りなさい」と云うことで済んだと話していました。
日本とは総ての事情が異なるとはいえ、何ともユーモアのある処置ですね。

その後暫くして、日本から来た友人達とマウンテンビューの日本人の経営するスナックへ行ったときのことです。
食事を済ませてから閉店までいたと思うのでかれこれ夜中の2時か3時かも知れません。飲んでいたので、店を出る時はお互い声高に笑いながら別れたのですが、これがいけません。
駐車場に入り、車に乗った途端、隣にパトカーが停まっており、しかもこちらの様子を窺っているのです。駐車場の酔っぱらいを思い出しました。
それからはエンジンを掛けずパトカーと忍耐比べです。
10分もしたでしょうか、突然パトカーが出て行きました。暫く様子を見て念のため反対の出口から出て家路についたつもりでした。

正に「つもり」であり、気が付くと隣の車線をピタリと肩を並べてパトカーが走っているではありませんか。夜中のこと、ほかには全く車の姿はありません。
それからと云うものは、車線のの白線と車のスピードメータだけを見て走り続けたのです。

車の車検が、ライトはつくか、ブレーキは効くか、ハンドルは正常かだけであると同様に酒飲み運転も、ジグザグ運転はしていないか、スピードは速すぎないか、遅すぎないか、の3点ですから白線とメータが勝負だったのです。
見通しの効く道路には全く車の陰もないのですから。

20分も根比べのように走ったでしょうか。とうとうパトカーはあきらめて去っていきました。
こんな話をしても既に時効ですよね。

* * *
gさんも、もう時効だと思い、よき時代を懐かしく振り返って話して呉れたものと思う。いまも海外で活躍している人たちが、こんな無茶をやっていると思われるとgさんにも迷惑を掛ける。
時代は変わって、いまca州は飲酒運転には特に厳しいと聞いている。
どうぞ、誤解の無いように。(ゴキブリ独白)

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