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No.009

tさんの「ぶらりヨーロッパ」

96/10/08
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<ゴキブリの前置き>

この話を赤ゲット物語」というのは当を得ていないかも知れない。
何故なら、赤ゲットという言葉から受ける感じは、さも何事もなく海外旅行をして来たかの様に振る舞う人が、実はおのぼりさん丸だしの失敗をしていた、と云う落ちがないと実感が出ない。
tさんの話は、始めからあけすけなのである。だから、「赤ゲット物語」として書いては失礼だろう。まあ書く方も暴露している罪悪感がなくて気が楽ではある。

tさんはある企業の社長さんである。
社長さんだから海外経験も豊富だろうと思うかもしれないが、其処がこの御仁の一風も二風も変わったところなのだ。
何しろ、気取る訳でもなく、「江ノ島から先は行ったことがない」と豪語?する人だから海外経験など、さらさら無く、行きたいとも思っていない。
つまり、海外がなんだ。という生粋の日本人なのである。
この話は、そんなtさんが、ひょんなことからヨーロッパに行かなければならない羽目に陥った時の、ご本人が語る経験談である。

* * *
とにかく弱った。
江ノ島から先は行ったことが無い、と見栄を切っている私が、ところもあろうにヨーロッパに行かなくてはならない。
えゝままよ、と覚悟を決めたのは出発の一ヶ月も前のことだったろうか。
このツアーは、仲間の会社が集まっての研修旅行だから特に気取って構えることもない。何とかなるだろうと多寡をくくって出かけることにした。

メンバーが決まって見ると案の定、日頃会話を交わし冗談を語る仲間である。
だから、出かける頃はこれは案外楽しい旅行になりそうだわい。という心境になって来た。
何処へ行くのかはツアーガイド任せである。従って以下の話も何処へ、いつ行ってどうであった、など細かいことを話す気もない。いや、覚えていないのだ。
だから、場所など気にかけず、ヨーロッパのどこかの国、どこかの町で経験した、珍道中と思って聞いて欲しい。

空港での迷子
細かい話は省略して、何だかんだといっているうちにどこかの空港に着いた。ご存じの様に、バッゲージクレームとやらで荷物を受け取り、通関を通ってバスに乗る。
荷物が出てくると、みんな我先に通関に殺到する。
よく見ると我がグループの荷物カートが、あちこちに放置してある。
これはいかん、片づけて行かなくては日本人旅行者のマナーを問われる。
と考え、近くのカート置き場に2~3台を片づけていたんだ。

それやこれやで、通関を出たときには仲間の姿は全く見えなくなっていた。
さて困った。だがこんな時、慌ててウロウロ歩き回ると益々わからなくなる。
そう言えば仲間にはぐれて必死に探し歩き、果ては恐怖のあまり、チビってしまったと云っていた男もいたっけ。此処はデンと構えるに越したことはないと腹を括った。

その場を全く動かず、片隅に腰掛けて煙草をふかしながら待つこと暫時、案の定ツアーガイドが、いきせき切って戻って来た。作戦は成功である。

「こんな処にいたんですか、もう皆さんバスに乗ってお待ちですよ」と文句を言っている。何を云うか、である。
バスの中では、またもガイドが私の迷子事件を面白おかしく紹介している。
そこでね、私は「迷子になったのは私じゃないよ。残りの皆が迷子になっただけだ」と言い切っておいた。
私は迷子になって彷徨い歩いた覚えはない。事実、みんなが迷子なのである。

エレベータとリフト
ヨーロッパのホテルは古くさい割に格式高く、何となく取っ付きにくい。
さて、エレベータに乗って自分の部屋に辿り着かなくてはならない。だが、何処にエレベータがあるのか皆目検討が着かないのだ。
仕方なくボーイやポーターらしき人間を捕まえて「エレベータ!」と怒鳴ったが、一向に通じない。
後で分かったことだが、アメリカはエレベータだが、ヨーロッパはリフトと云うそうだ。部下の作った虎の巻に書いていない、帰ってから文句を云わなくては。

メッセージランプ
その後もツアーは目まぐるしく欧州各地を移動する。
後で聞いたことだが、部下は留守中の報告のため、異動先の時差を計算し、次々とファックスを送っていたそうだ。そうだ、というのは実はそのファックスには、ついにお目に掛かることが無く帰国したからである。

そういえば、あちこちのホテルで電話機のランプが点滅していた。
「ほう、ヨーロッパのホテルは暗闇でも電話機が此処にあるよ、と教えて呉れる、便利なもんだ」ぐらいに考えていたのである。
このランプが点滅している時は、「お客さんににメッセージが届いていますよ」という事だなどと、これも虎の巻には書いていない、けしからん。

結婚式に参加する
ツアーの途中で結婚式に、それも見も知らぬ外国で?と思われるかも知れない。
然し、本当に有った出来事なのだ。
あれは何処だったろうか。決められた時間に、決められた場所に集合することになっていた。だから、予定の時間少し前に部屋を出て、それらしき場所を探していたんだ。

大勢が集まっている場所がある。此処かなと思い、何の気もなしにその集団に近ずくと、言葉は分からないが「やあ!よく来たこっちだよ」と云うように私を中に導いて呉れる。
つられて中に入ると、飲み物やオードブルを運んで来る。だがなんだか雰囲気が変だ。如何に私でもツアー仲間の独りも居ない、この集団が集合場所だと思いこんだ訳ではない。よくよく観察するとどうやらそれは、結婚式の披露宴らしい。その場は何とか遁走して、本来の集合場所に辿り着いたが、これもお土産話の一つだね。

* * * この他にも、友人と道路端で取った記念写真が実は、お遊びの看板の下で「おや、此処でお遊びで、出て来られたところですね」と勘ぐられたり、フラメンコの酒場で、現地の酒の入った大きなピッチャーをそばに、大宴会を始めた話やら、尽きるところがない。
いずれ、この話を本に纏めてみたいものである。

ごきぶり日記

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