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No.060

酒のこと(その2)

97/11/05
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酒というものは不思議なものです。開びゃく以来、古今東西を通じ、うれしいにつけ悲しいにつけ酒が付き合ってくれるのですから、やはりこよなき親友なのでしょう。旨いものがあり、友がおり、雰囲気が出来上がれば無上の幸福感に浸ることが出来るのだから、仲々やめるわけにはいきません。肴といえばやはりなんと云っても刺身です。日本は至るところに浜があり、新鮮な魚が豊富だからたまりませんね。

何処の地方に行っても自慢の地酒があり、甘いとろっとした酒、辛口の舌触りの良い酒、淡泊でのど越しの良い酒、いずれも甲乙が付けにくい。
私は一時、灘の銘酒に凝っていましたが、近頃は東北の酒に傾倒しています。
一時幻の酒と云われた新潟の「こしの寒梅」、青森の「陸奥の友」、宮城の「浦霞禅」などが、のみ心地満点で悪魔のように、美女のように誘います。

こうして書いて来ると酒を賛美し、酒に浸って生きた古今亭志ん生のように思われそうですね。そう出来たらどんなに幸せでしょう。
美酒は百薬の長であり、同時に身を滅ぼす元でもあるわけで、美しくも妖しい美女のように、理性を従わせようと思っても己に克つことは出来ません。
うまい酒、新鮮な肴、心の合う友、と条件が揃えば一杯は必ず二杯になり、やがて理性は意識の外に放り出されて、もう一人の自分がいくら忠告しても云うことを聞きません。呑ん兵衛が誰しも経験する酒の魔力、酒の魅力です。

いろいろな酒癖を持った人がいます。ある近所の友人で飲んで帰ると途中で必ず逆立ちをしたくなる男がいて、次の朝そこには定期、手帳、名刺入れなどが、固まって落ちています。そんな遺失物だからすぐ近所の人が届けてくれて心配は無いのですが、繰り返せばすぐ近所の評判になります。恐らく本人は翌朝、どんなにか自己嫌悪に陥り、それこそ「酒やめた 酒やめたは 朝のこと」でしょう。そんな美談?の持ち主でなくとも朝起きて何となく、昨夜は言い過ぎたかな、はしゃぎすぎたかなと後悔するものです。

酒席で寝てしまう人もいます。皆がわいわい騒いでいても、きちんと座ったまま、首をうなだれただけで深い眠りに落ちて行きます。このことを、とやかく云う人がいますが、要するに酒が弱いということで、10分かそこら放って置いてあげれば充分に熟睡し、パッと目を覚ますと、また一緒になって騒ぎ始めるのですから問題にすることは無いと思いますがね。
こうした睡眠は健康には非常に良いそうですから、むしろ羨ましいことです。

前にも同じことを、お話ししましたが、“人間の臓器は部品と同じ、だから欠陥部品もあるさ”という人が居ました。アルコールの分解工場である肝臓の処理能力は、確かに人によって大きな差があるようです。いつも浴びるように飲んで、それで居て肝機能指数は標準値というのは神の手違いによる不公平ですね。尤も酒が飲めないからといって、人生の価値や面白さが減少する訳ではないのですから、これは呑ん兵衛側の僻みでしょう。

酒は楽しく呑み、ストレスを解消し、明日に持ち越さないのが基本ですが、そんなコントロールが効くなら酒ではないのでしょうね。

* * * <ゴキブリ後記>
高度に進化した哺乳類の人間が心の安らぎと平衡を求め、呑むのが酒ならば人間は進化と引き替えに精神的に弱くなったということか。
深酒をする度に、脳細胞が次第に死滅するよ。

ごきぶり日記

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