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No.063

詐欺師

97/11/26
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人を騙す、騙される。嫌な言葉だがそれほど簡単な仕事ではない。
高木彬光の「白昼の死角」程の知能犯でなくとも人の心を読む頭の良さが要る。世の中の流れを知り、人も心を読み切り、微妙な心のひだに、あるいは隙間に取り入る。

何でそんなことに騙されるかという勿れ、人間には無数の隙があるし、隙があるから人間なのではあるまいか。詐欺は心のゆるみ、落ち込み、ふとした迷い、魔が差したというかふっとその気になったとき。その心の僅かな隙間につけ込むのだから確かに悪質である。

此処は、東京とは名ばかりの郊外の静かな街。ある会社の若い社員が悩んでいる。聞けば止まり木だけの小さなスナックで友人たちと飲んでいるとき、ある男と何のきっかけもなく、ごく自然に友達になったという。
はじめの2、3回は、お近づきになったおしるしにと、その男が全部払う。
何回目かに「あっ、今日は財布を忘れて来てしまった!」と云いながら領収書の束を見せ、これを請求すれば大金が入るのでちょっと貸しておいて呉れないか?と持ちかける。

充分に信用した頃合いを見て、次第にクレジットカードまで貸りてしまう。
念の入ったことに、アパートに引き入れて保険証まで貸していた。変だな?と思った時にはすでにその男の姿はない。保険証をかたにベンツを借りて行方不明である。

云うまでもなく刑事事件である。だが、警察は人相風体を聞いただけで、「あぁ、それは前科6犯の---だよ」また引っかかったか、しょうがないなぁ、というようにうんざりした顔をしたという。こんな話はむしろ自己責任であって、この忙しい時にと興味が沸かないのも無理はない。
私も傍観しているわけにも行かず、たまたまこの責任者が私の知り合いであったことから同伴したところ、「あなたの頼みでは仕方がない」とばかり、実に一生懸命に捜査して頂いた。

その結果、数人が100万円未満の被害で済んだものの、ベンツが見つからなければ一千万円以上の被害となったろう。その刑事さんが「日本に未だこんな人の良い、純真な会社があるんですねぇ」と感心とも皮肉とも取れる感想を話していたのを思い出す。

規制緩和が進むとビジネスチャンスが大きく広がり、あの手この手の商売が闊歩する。人の限りない欲望や心の隙を巧みに突いた詐欺すれすれの商売も増えるだろう。銀行や証券会社も何処が潰れるか分からない。自分で目を開き、自分の責任で生きなければならないサバイバル時代に入る。先ずは自分自身の危機管理が必要だ。

ごきぶり日記

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