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No.070

仙台(2)

98/01/01
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新幹線で分断された東側は、戦前の旧い家並みがぎっしりと並んでいる。
道路は狭く、歩道のない道は30センチ程度で、そこには電信柱が大きな顔をしてのさばる。その道を人と自転車と車が同居する難所が、くねくねと連なって流れている。

近代都市化された西側に取り残されたように、時代の匂いが漂う。
だが、歩きながら一軒一軒を眺めると、時代がそのままに残って居るのに気が付く。間口の狭い萎びた建物が「仙台箪笥」と小さな看板を出している。
恐らく仙台箪笥一筋に時代の流れなど一向に気にとめず、生きて来たのだろう。仙台駄菓子、軍手の専門店など一体いつから始めたことかと余計なことを考えながら歩く。

その一角に何の変哲もない文房具屋がある。狭い間口に雑然と並べられた商品の上には間口一杯に和紙が横断幕のように張られており、大きな達筆で毎日何か書いてある。川柳のときあり、小言のような言葉あり、その日の感想らしき言葉あり、全く気取らない心のままの文章が日替わりで書きつづられている。
聞けばその町の名物であり、随分昔から続いているらしい。当主の続く限りこの名物は生きるのだろう。

仙台は川が多い。東半分には七北田川、梅田川、広瀬川、名取川などの大きな川が満々とたたえた水をゆったりと流し、人の心を和ませる。仙台人の心のよりどころである。「広瀬川の畔に家を建てて住むのが最高の贅沢なんですよ」と人は云う。

街の中心部から国道48号線を山形方面に、40分ばかり飛ばすと作並温泉に着く。此処に岩松旅館という伊達家ゆかりの温泉旅館がある。
急坂道の様な白木の廊下を延々と下って行くと、混浴の岩風呂が転々と連なっているのが有名である。

国道48号線を三角形に南西におりると、秋保(あきう)温泉である。
瑞鳳、佐勘、岩沼屋、などの豪華な旅館を過ぎて暫く行くと有名な秋保大滝がある。鬱蒼とした神社境内の出店に、まむし酒が多く、「これ、本物?」と聞いたところ、「なにいうだ。今朝捕って来たばかりだ!」と叱られた。
此処を更に進むとあたりは深山渓谷の様相を帯び、紅葉の季節は絶景な岸壁が点在し、萎びた二口温泉に着く。此処からでこぼこの林道を40分ばかり運転すると山寺に抜ける。

何となく温泉に入りたくなると、仕事を中断してこの何れか、気の向いた温泉に車を飛ばす。午前11時頃に客が出立し、次の客がチェックインするまでの午後の2時頃までは旅館の閑散時間帯になり、何処の旅館もこの時間を解放する。
昼間は人も少ない。大きな岩風呂に一人でのんびりつかるのも、こんな所でなければ味わえない、まさに箱庭の素晴らしさである。
箱庭といえば、冬は風呂の外の庭木にうっすらと雪が積もり、風呂の中での熱燗が無性に恋しくなる。

-続く-

ごきぶり日記

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