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No.098

東京ぶらり散歩(3)

98/06/19
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文京区役所。
多寡が区役所、と云いたい所だが、この区役所は凄い。都庁と競り合って作ったとしか思えない豪勢さである。

地上27階建てで、26階が360度の展望台になっている。池袋のサンシャインビル、新宿の高層ビルがすぐそばのように俯瞰出来る。
眼下には東京ドーム、後楽園、小石川植物園、講道館、東京大学、皇居まで連なり、旧東京市を余すところ無く展望出来る。

春日通り、白山通り、本郷通り、外堀通りなどの由緒ある通りが縦横に走る。
年輩の人が熱心に説明をしてくれている。恐らくは地元の江戸っ子だろうな、と思いながら、
 「あそこの植物園の角が私の故郷なのですが地元の方ですか?」
  と声を掛ける。

 「小石川?小石川のどちらですか?」と怪訝そうに応える。
 「戸崎町ですが」 勿論、戸崎町などという名前は今や無い。
 「ほう、私は生まれた時から今まで戸崎町ですよ」
 「すると小学校はどちらで?」
 「柳町小学校です」
 「私もですよ」

知らずに話しかけた人は、遙か昔の小学校の大先輩であった。
故郷で先輩に巡り合うことは珍しくも無かろう。だが、あの悪夢の東京大空襲で東京は大変貌し、懐かしい人々は散りじりになってしまった。
それでもやはり、土地っ子はしがみついていた。この想いは、この時代を経て来た人たちにしか分からないだろう。此処には昔、何々が有りましたよね、何々がまだ残っていますよ、とまるでついこの間まで一緒にいた隣人のように話しかける。

「行政が分からず屋ばかりで古い懐かしい町名をみんな変えちまう。べらぼうな話ですよ」江戸っ子が地を出すのも何とも懐かしい。
26階からそろそろと各階を覗く。近代的なビルとは裏腹に、そこには古めかしい昔ながらの区役所の事務室があった。そういえば戸籍謄本を送って貰うついでに文京区の資料を、と思い電話を掛けた時、「来ればありますよ」。
役所は時が止まったように時代に関係なく、古めかしかった。

東京にも故郷がある。しみじみそう感じる小石川、本郷散歩であった。

ごきぶり日記

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